管理者インタビュー

看護師としての経験と知識を活かし、本気で人の立場に立って考える。その思いを共有する人たちと働ける幸せを実感しています。

クオーレ八王子管理者インタビュー

高度救急救命センター、ICU勤務、その後特別養護老人ホームへの転職、看護師として幅広い経験を積み、訪問看護ステーションにゼロからの挑戦する青柳さん。管理者として、一緒に働くスタッフへの思いや今後のビジョンについてインタビューしました。

看護師になったきっかけ~私の原点

ーー まず、青柳さんが看護師の道を選ばれたきっかけを教えてください。


看護の道に入ったきっかけは、母親の知り合いの看護師さんです。僕、10代のころはヤンチャしていて、ここではお話できないくらいの落ちこぼれでした。

当時いろいろあって、ちょうどくすぶっていたころでした。ある日突然、その人が働いている老健にいきなり連れていかれて…きっと母親も何とかしてほしいと相談したのかもしれません。(笑)

とてもパワーのある看護師さんで、「男なのに、何をやっているのだ!あなたの手は喧嘩をするためにあるんじゃない、人を助けるために使いなさい!今日から介護の仕事をしなさい」と。

それで、看護の勉強をする入り口を作ってもらった、というのが最初です。

19歳で看護学校に入り、同時に高校にも行きながらだったので、23歳で看護師になりました。


ーー 看護師になって19年目になるそうですが、これまでどのようなところで働いてきましたか?


臨床経験は、大学病院や都立の病院、民間病院の三か所で、高度救急救命センター、ICU、急性期病棟で、最重症の患者さんの看護にあたっていました。

一年半くらい緩和ケアの病棟にもいたことがあります。同時に、看護師、ヘルパーの学校の講師や看護実習生の指導も担当させていただきました。


ーー 学校の講師もされていたんですか。


はい、非常勤ですが、講師もしていました。

僕が働いていた病院は、周囲に向上心のある人が多くて、働きながら大学院に通ったり、認定看護師の資格を取ったり、管理職を目指す人がいたんです。僕は当時の看護師長のすすめもあり、管理職のコースを進むことになりました。


ーー 管理職候補として見込まれた、ということなんですね。


「青柳くんは男気があるから管理職をやるといい」と言われましたね(笑)。

男性が少ない職場だから目立つ、というのもあったと思います。当時、自分もまだ若かったし、バリバリ仕事こなすって感じで、人が嫌がる仕事は自分がやる、先輩たちの言うことは聞く、というスタンスでいました。そういうのが良かったんでしょうか。

あとは、女性の先輩たちの愚痴など話をよく聞いていましたね。そのうち、相談事も多く持ち込まれるようになっていき、そういう面でも信頼してもらえたようです。


ーー 人をまとめる力が当時からあったんですね。


わりと昔から〝仲間を仕切る”、みたいな立場ではありましたが(笑)。

命と直結ということもあり、当時の先輩はとても厳しかったと思います。今では、パワハラといわれるかもしれませんね。時代ですかね。(笑)離職率も多くて、人も増えず、忙しいという悪循環でした。パワハラは良くないなと思い、僕が教えられる立場になった時は、新人に対して丁寧に仕事を教えていきました。

そうすると後輩が育ってくれるんです。そうやって仕事を覚えてもらえば、仲間も増えて、忙しさも軽減されていきました。

看護師不足は昔からずっと言われていたので、後輩を育てるのも大切だと思っていました。

退院後の患者様の様子が気になり、在宅看護への思いが芽生えた


ーー その後、さらに民間の病院に移られたんですね。


はい。31歳のとき、知り合いだった民間病院の看護部長さんに来てくれないかと、お誘いを受けまして。看護師長としてICUと病棟の管理をさせてもらいました。

ですが、厳しかったです。自分よりも年上の看護師も多く、最初は誰も僕の言うことを聞いてくれませんでしたね(笑)。


ーー どうやって信頼を得ていったんですか。


その病院は救急患者の受け入れが地域でもトップクラスでしたので、とても忙しい病院でした。たとえば、業務内容の記録や指示などの手書きの紙媒体でやっていたことを、パソコンのワード、エクセル、パワーポイントを使って、「こっちのほうが簡単でしょ」とやってみせたり、仕事はチームワークでやればこんなに効率がいいものだよ、というのを実践していきました。

また、スタッフ一人一人の得意なことを委員会で活かしたり、そうしたら、だんだん人がついてきてくれるようになりました。

そうやって働くうち、その時は、病棟をいう世界は小さいけれど、自分でよりよく変えていくことができる。もっと、できることを広げていきたいな、と思い始めまして。看護師で起業している人がいると知り、自分も独立して、訪問看護をやってみたいと思ったんです。


ーー なぜ訪問看護に興味を持ったんですか。


急性期医療の現場にいると、必要な処置を終えたら患者さんとの関わりは終わります。「あの患者さんは退院したあと、どうしているだろう」と気になることもありました。

また、看護師長として病院の運営面にも関わる機会があり、もっと経営などを学び、在宅医療を立ち上げたいな、という思いが生まれました。

特養に転職。病院での看護との違い、在宅看護の必要性を実感


ーー その後、特別養護老人ホームに転職されたのは、将来的に訪問看護をやろうと決めたからでしょうか。


そうですね。病院では管理者でもあり、看護師として夜勤もあってすごく忙しくて。落ち着いて今後のステップアップについて考えたいという気持ちもありました。

当時の病院にもヘルパーさんはいたんですが、医療者の立場だとヘルパーさんたちの言っていることをすくい取れないこともあり、それが反省点でもあったんです。

だから今度はヘルパーさんが多い職場で、その人たちの仕事も見たいと思いました。それで実務者研修修了書(ヘルパー1級)の資格も取りました。


ーー 病院と特養とでは、同じ看護師の仕事でもだいぶ違いますか?


違いますね。僕がいた急性期の現場では、当然「医療」が主たる目的ですが、特養というのは、「生活」に比重が置かれます。

例えば、病院のときは、食べられない人には当然のように点滴をしましたが、特養だと口から食べられるようにします。

痰が絡む人にごはんなんて食べさせられない、という感覚でいましたが、特養ではそういった方でも食べされるようにするんです。

介助の仕方や、形態などを考えて、工夫すれば、口から食べられるんですよ。口から食事がとれるって、当たり前に感じるかもしれませんが、当時の僕にとって大切なことなんだと感じました。「16年も看護師をやってきて、自分はそんなこともわからなかったのか」と愕然としました。

一人の利用者さんのことを、ヘルパーさん、看護師と、立場の違う視点で考えられるのが、すごいなと思いました。


ーー 特養で働いてみて、訪問看護について考えを深めていったんですね。


特養にすぐ入れなくて、順番待ちをされている方もいます。ある意味、入れる方は限られています。いろいろな場面で、高齢者の方々の抱える社会問題を実感しました。

そういう方たちは在宅看護が必要な方が多く、その方たちやご家族のニーズも感じていました。


ーー そのころから独立に向けて、徐々に準備を始めたんですか。


看護師独立を支援する会社の資料を取り寄せたり、お話を聞き、独立したい看護師と、訪問看護の事業を始めたいオーナーとのマッチングがあることを知りました。

そこで、本当にタイミングよく、いまの社長と出会うことができ、訪問看護ステーションの開業につながりました。

同じ思いを持つ仲間と共に働ける幸せ


ーー 管理者としていまの訪問看護ステーションを立ち上げられ、いかがですか。


訪問看護の管理者の仕事も含め、初めてのことばかりで大変ですが、やりがいがあります。

立ち上げ半年くらいで利用者さんが増えてきて、地域の先生ともつながることができましたが、それでも最初の1年はとても大変でした。

でも、立ち上げに際して、何も言わずに僕についてきてくれた女性看護師2人と、開設後すぐに来てくれた男性看護師と、そのスタッフ3人の顔を見たら、簡単にはやめられないと思いました。

利用者さんに怒られて、ステーションでがっくり肩を落とす時もありました。良い時も、悪い時も、ともに支え合ったという感じで、それまで、人とこんなに近い関係で仕事をすることがなかったので、仲間がいたから頑張れたというのが大きいです。


ーー 開業から今年で3年目となり、スタッフも増えていますね。


現在、看護師が7人、理学療法士が2人、事務員さん、非常勤が5人います。

病院のときから仲間を大切にしたい気持ちはありましたが、当時は人数が多いので大勢の中の一人になってしまう。でもいまは、一人ひとりのことがよく見えます。

みんなすごく良いスタッフなんです。「みんながいたから今の自分がある」と思うし、「みんなが幸せになればステーションも良くなる」と、いつも思っています。仕事では、人材が一番大事ですね。みんなは僕の宝物です。


ーー 素敵な考え方ですね。この先、どのような方と一緒に働きたいと思っていますか。


利用者様のことを一番に考えられる人ですね。

医療従事者って、どうしてもポジションパワーを持ってしまうというか、患者さんに対して強い立場となりがちなんですが、資格をもって知識をもっているからこそ、患者さんやそのご家族など、困っている人の力にならなければいけないと思います。

本気で人の立場に立てる人、医療を押し付けない人、チームワークのある人がいいですね。

看護師としてある程度の経験は必要ですが、それよりも大事だと思うことは、人間力ある人と一緒に働きたいです。個性の強い人も歓迎します。

ほかのところで「変わってるね」と言われるような人でも、うちに来れば大丈夫です!(笑)僕自身が相当変わっていると思います。(笑)


ーー 医療を押し付けない、というのは、在宅看護ならではの考え方なのでしょうか。


そうですね。在宅って医療目線だけではなく、生活重視という意識が大切です。

生活より優先するような医療ケア、ご家族の負担になるような難しいケアをどんどん入れるのはよくない。押し付けるのではなく、なにがその利用者やご家族にとって一番いい方法か、スタッフ同士でも話し合っています。利用者様、ご家族に寄り添うことが大切ですね。


ーー 看護師、しかも訪問看護ステーションというと、仕事がハードなイメージがありますが、ワークライフバランスについては、どんなふうに考えていますか?


コロナの時代ですし、無理にスタッフを集めることは控えています。早く帰れるときは帰ることを大切にしています。休む時はしっかり休むこと。心が疲れてしまったらよい看護もできないので。

僕自身は、休みの日は釣りやサーフィンに行ったりします。サーフィンの、“自分で沖にいって、自分で漕いで波に乗る” ”波に乗った時の気分は乗った人しか味わえない”という感覚が好きなんです。

人生に似ているなと思って。暗いところも乗り切っていけば、いいことが待っている、と思えます。

釣りも、この魚を釣るためにはどのルアーを使って、というふうに工夫するのが好きですね。これも仕事に似ていると感じます。

趣味や、リフレッシュの時間は、仕事と同じくらい必要だと思っています。

スタッフにも体調管理として、しっかり休むことや、リフレッシュを怠らないことを伝えています。有休も全部使ってしっかり休む、早く帰って自分や家族との時間を大切にできるように心がけています。

お気に入りのショートボードです!

(お気に入りのショートボードです!)


訪問看護に加え、居宅、ナーシングホーム、子ども支援事業も計画中


ーー 今後、事業をどのようにしていきたいとお考えですか?


いま作業療法士がいないので、ぜひ採用できたらと思っています。看護師も10人くらいの体制にしたいですね。

ただ、訪問看護ステーションについて言えば、一つの事業所としてはそんなに規模を広げるつもりもなく、必要なら他のエリアへサテライトを作ろうかと思っています。

ほかに、ナーシングホームや居宅介護事業支援所を作りたいんです。訪問看護ステーションに居宅もあれば、ケアマネさんともすぐにミーティングができ、密に連携をとれます。同じ志のスタッフがいるのは、利用者さんのためにもなります。

ナーシングホームを運営するには介護福祉士も必要だし、高齢者社会に向けてはマルチに対応できる、複合的な体制でやっていけるよう、計画しています。

それと、もう一つの柱として、子どもを支援する事業もやりたいんです。


ーー 子ども向けの事業ですか?


自分が若い時期、いろいろヤンチャをして過ごしてきたっていうのもありますが、ヤンキーじゃなくても困っている子がいますよね。なにをやっていいかわからない、とか。

看護学校のときに少年院を慰問したり、カウンセリングの資格を取ったので、子どもたちのために何かやりたいという思いがあります。

看護の仕事も訪問看護だけでなく、少し違う方面に視野を広げるのもいいかと思って。

訪問看護を足掛かりに、いろんなジャンルで仲間を増やして、新しいことにチャレンジしていきたいと思っています。


ーー 夢が広がりますね。青柳さんの今後のご活躍が楽しみです。

本日は有難うございました。